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2021年はモダンウォッチへの関心がヴィンテージを追い越した年ではない

警告:この先、はっきりしない結論と強い意見が出る。

この年末年始の「Point-Counterpoint」は、あるひとつの問いを軸に展開される。今年はモダンウォッチへの関心がヴィンテージウォッチへの関心を上回った年なのだろうか? この「Point-Counterpoint」は、ある種のマナーを守った自由な議論の場であればとても楽しいが、今回はより微妙なニュアンスで答えが導き出されたように思う。ジョン・ビューズはYesと答え、それに対して私はNoと答る。ドン・コルレオーネの言葉を借りて、「その理由を説明しよう」。

 今年は、比較的少数のブランドの比較的少数の時計が多くの関心を集め、多くの見出しをつけた年であることは確かだが、興味深いことに、これはほとんどの場合、空前の需要という抗しがたい力(私は、今日のような時計に対する飽くなき渇望のレベルを見たことがない)が、不十分な生産という動かせない物体に正面衝突した副産物なのである。

 特別な時計が軒並み品薄になり、マニアやコレクターのあいだで話題になっているのだ。そのため、彼らのなかには、怒り、苛立ち、不信感といった感情が渦巻いている。

誰に怒っていいのかわからない。裏口から不正な高値で売りつけ、その差額を懐に入れる小売業者か? 何十年も高級ブランドらしく振る舞ってきたのに(高級ブランドと顧客のサドマゾ的関係は高級ブランドと同じくらい古い)、突然レジャー層からの不満の声に同調することを期待されているブランドなのか? 時計メディアの記者だろうか? 他のコレクターか? 宅配便の人? それとも猫か?

この結果、確証バイアスと呼ばれる、「物事があるように(強く)感じ、その認識を裏付けるために事実を後から選び出す」ことが起こるのだと思う。時計以外の世界からの例は、2021年という一年の終わりに、感情が本当に事実であると(または少なくとも彼らの感情であると)永遠に信じない人に容易に起こるだろうが、ちょっと、我々は時計について話すためにここにいるのだった。

しかし、考えてみて欲しい。話題の高級時計をちょっと取り出してみよう。スティール製ロレックスのプロフェッショナルモデル、ロイヤル オーク、ノーチラス、そしてヴァシュロン・コンスタンタンのいくつかのオーヴァーシーズモデル以外の世界はどのようなものだろうか。

自分の思い通りになることに慣れている人たちが、今回はそうはいかないと深く憤る一方で、そういった特殊なモデルを除けば、今年も昨年とそれほど変わらないように見えるのだ。人々はヴィンテージ・パテックやヴィンテージ・ロレックスに大金を払う。カルティエは、ヴィンテージのオークションで過去最高(多分)の成績を収めた。ハイエンドでは、ヴィンテージのジョージ・ダニエルズにお金を払わない人はいないようだ。ただし、彼のものは、ヴィンテージ全体への関心を測る指標というよりは、興味深い異常値だ。ヴィンテージのオメガは、少なくともいくつかのケースでは、高値で取引されている。


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